『ダンジョン・ワールド』日本語版が公開
『D&D』に代表されるような、剣と魔法のファンタジー世界を舞台に、軽量なルールと、プレイヤー達の発想力を重視した切り口で冒険に挑むTRPG『ダンジョン・ワールド』の日本語版が本日公開されました。日本語版ルールはウェブサイト(リンク)にて無料公開されており、セッションで役立つプレイシートやサンプルシナリオもサイト内で無料配布(PDF)されています。
本作のライセンスはAttribution 3.0 Unported (CC BY 3.0)であり、この『ダンジョン・ワールド』日本語版に関しても、CCBY3.0に基づいて翻訳・公開されています。
『ダンジョン・ワールド』は、エルフやドワーフ、ヒューマンなどの種族が登場する、オーソドックスなファンタジー世界観を基礎とするTRPGです。プレイヤー達はファイターやクレリック、バードといったファンタジーではお馴染みのキャラクタークラスの中から一つを選択し、心躍る大冒険を求めて辺境の地やダンジョンへ分け入って行きます。ここまで聞く分には、他のファンタジー系TRPGと比べて特に大きな違いはないように思われるかもしれません。しかし、『ダンジョン・ワールド』の最大の魅力は、なんと言っても、そんな古典的なファンタジー世界を、プレイヤーたちの自由なアイディアを主体に冒険することができるというところにあります。
ルール軽量で即興性の高いプレイスタイル
『ダンジョン・ワールド』では、プレイヤー達はセッションの冒頭で一緒にキャラクターを作成していくことになります。事前にキャラクターの設定を考えてセッションに参加するのではなく、参加者全員で会話を交わしながら自PCを作っていく中で、自然とその場のノリでPC同士の思いがけない設定が生まれていくのも、『ダンジョン・ワールド』のキャラメイクの面白さの一つです。また、PC同士で同じクラス(全部で9種類)を選択できないというルールもあるため、役職が被らず、パーティの全員が個性を発揮できるようになっています。
セッションの冒頭でキャラクターを作成し、そのままシナリオを用意せずに即興で冒険を開始するというスタイルが可能なのも、面白いポイントです。とにかく剣と魔法のファンタジーという漠然とした舞台設定で冒険がしたいが、細かい世界観設定は不要と考えるプレイヤー層にとっては、この『ダンジョン・ワールド』のルールブックはまたと無いおもちゃ箱になるでしょう。

クラスは全部で9種

『ダンジョン・ワールド』のシステムとしての特徴の一つに、「ムーヴ」というものがあります。これは、スキルのようなものとは少し違い、特定のシチュエーションになった場合に、そのキャラクターが行うことができる特別な行動のことです。これは、セッション中の描写や展開に関して、プレイヤーに大きな権限を与える仕組みとも言えます。その場で新たな展開をプレイヤーに考えてもらうような「ムーヴ」や、思いがけない設定を即興的に考え出してもらうような「ムーヴ」もあります。「ムーヴ」には共通のものから、クラス固有のものまで様々なタイプがあります。『ダンジョン・ワールド』では、何か特定の行動に対して判定が発生するのではなく、GMとプレイヤー達との会話を通して、こんな状況なら、このムーヴが当てはまるね。という形でセッションが進行していきます。この判定と物語がシームレスに続いていくスタイルこそが、『ダンジョン・ワールド』というゲームの奥深さなのです。
充実したユーザーサポート
即興性や自由度の高い世界観などと聞くと、中にはどうやって遊んだらいいか困ってしまったり、敷居の高さを感じてしまう方もいるでしょう。しかし安心していただきたい。『ダンジョン・ワールド』日本語版のルールブックの中では「どうやってこのゲームを遊ぶのか?」「どのようにプレイヤー達を導いていくのか?」という基本的な部分から、「このゲームを他の人に教える際にはどのようなポイントを押さえて売り込めばよいのか」というお悩み(付録2)まで、手厚くサポートされています。ウェブサイト内では、セッションの際に役立つプレイシート(PDF)も公開されていますので、合わせてダウンロードしておきましょう。
翻訳者と今後の展開について
『ダンジョン・ワールド』は、多数の海外TRPG作品の翻訳や紹介に携わられている塚越冬弥氏によって主に翻訳されました。ウェブサイト内では、その他翻訳や公開にあたっての協力者についても言及されています。また、表紙を含めた日本語版内のイラストに関しては、全て日本語版独自に書き直されています。
『ダンジョン・ワールド』は元々、2012年11月にSage LaTorra氏とAdam Koebel氏によって海外でリリースされた作品です。その人気は根強く、発売から2年間は海外の大手TRPG販売サイトDriveThruRPGの売り上げランキングトップ10に留まり続けていたほどです。そんなクラシックD&Dなどの精神を受け継ぐような本作は、まさに描写駆動的な方面から書かれたD&Dへのラブレターのような作品であり、海外で多くの人々の心を奪った『ダンジョン・ワールド』という作品が日本に上陸したことには、大きな意味があるのではないでしょうか。
『ダンジョン・ワールド』日本語版 公開サイト